読書感想文「四畳半神話体系」・白Ⅱ

■四畳半神話体系 読書感想■


 四畳半神話体系はアニメの方は見ていたので、原作を読んだ気になっていたが、読んでみると内容は全然違っていた。これは良い誤算だった。

 


 森見登美彦の魅力はたくさんあるが、一番目を惹くのはやはりその独特の文章だろう。
 知的でありながら馬鹿馬鹿しい屁理屈を大仰で装飾過多に書く文章はただ、それを読んでいるだけで面白く、笑わせてくれる。
 本作は四つの章によって構成されている。それぞれが独立して存在できる構成になっているが全部通して読んだ方がいいだろう。
 いわゆる平行世界ものと言えるかもしれない。
 主人公の「私」は大学三回生である。物語は三回生の五月に今までの不毛な二年間を振り返ると言う流れで始まる。
 四つの章でそれぞれ「私」は違う道を選ぶのだが、大体は同じような運命をたどり三回生になる頃には不毛な二年間を悔いることになる。
 私がこの小説で一番気に行ったところは「構成」だった。
 本作は四つの章で主人公は違う行動をとりそれぞれの世界で異なった体験をする。しかし、共通する設定や情報などが小出しにされている。そこが個人的にはツボだった。
 例えば「小津」が複数のサークルや謎の秘密機関に所属しているところとか「香織さん誘拐事件」の顛末や「自虐的代理代理戦争」のことなどである。
 ある章ではちょっとだけ触れられてよくわからない情報が別の章ではスポットライトを浴びて真相がわかると言った具合である。
 「小津」の師匠が誰で、何の師匠なのかは一話の段階では分からないが読み進めて行けばわかる。
 そんな仕掛けが物語の至る所に仕掛けられている。それを読み解いていくというのが私の求めている「面白さ」に近かった。
 反復、繰り返し、コピペ、などが業の域に達していて、本当にうまい小説だと感じた。
 最初のくだり、占い師のシーンなど(たぶん)コピペなのだが元々の文章が面白いので何度読んでも笑ってしまう。
 最初見た時は結構、厚い本だと思ったが読みやすい文章と巧みな話術に引き込まれするするとページが減っていった。
 とにかく面白く、欠点が見えない。
 暇な人、退屈している人がいたら、私はそっとこの本をそばにおいて立ち去りと思う。そんな小説だ。
 最後に作中に出てくる謎の屋台ラーメン屋「猫ラーメン」はぜひ食べてみたいと思った。猫ラーメンを好きな時に食べられる世界は「極楽」らしいので。