詩のようなもの1
■私の本■
まだどこにもない本を私は探している。
まだ誰のものでもない本を私は探している。
それはどんな大きな図書館にも、街中の本屋にもない本。
私はそれを探している。
たまにそれは見つからないのではないかとも思う。
けれど、諦めずに探していると手がかりを見つけることができる。
それは秋の空の清々しさ。
それは冬に近づく夜の風の冷たさ。
それはキンモクセイのかおり。
それは偉人たちの格言。
それは世界の秘密を記した謎めいた数式。
そういったものを見るとき、私の中にあるその本が、少しだけ、その重いページを開くのだ。
だから諦めてはならない。
私は今日もそれを探す。
まだ、書かれぬ私の本を探す。