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読書感想文・バームクー軒 「殺し屋の厄日」

 

 実はメンバーの連載ストックが無くなった事で始まった読書感想文企画。能動的に本を選んで読むのって、どうしても自分の狭い選択肢の中から選んでいるのでマンネリ化しやすいし、瘦せた読書体験になってしまっていると感じることもしばしばだったりする。そういったことからの脱却に、他人のお勧めの本を読むのはある意味において純粋に知的な物へ触れるいい機会だと思っている。プラスで言えば、他人の妄想の世界を遊覧船で回っているような気分になれるのが結構好きだったので、この企画には期待していたのだ。しかし、糞が。とんだ糞小説を掴まされてしまったぜ。開始早々数ページで突如上空から降ってきた排泄物が遊覧船を直撃。何とか体制を整えようとするも今度は下から排泄物が噴出し、哀れ俺氏の妄想遊覧船はあえなく沈没したのだった。

 

 

 今回の課題図書である殺し屋の厄日は、英国のミステリー作家クリストファー・ブルックマイアのデビュー作で、ミステリーというよりギャグよりのサスペンスといった内容になっている。というか、ギャグの方が主なのかも。

 作品はベテランの警察官が頭を抱えるほど酷い殺人現場を担当することとなったことから始まる。それは間抜けな犯人が自分の失態を隠そうとしたことからそうなったのだけれども。まあ、その後はジャーナリストであった主人公がひょんなことから事件に巻き込まれ、被害者の元奥さんや女刑事や色んな人の助けを借りて事件を解決していくといった感じで話は展開していく。デビュー作にしては、キャラクターはしっかりしているし、随所にネタを仕込んでいたり、政治に絡んだ悪役とそれをとっちめる主人公をジャーナリストしたり、意外性は無いけど落ちもしっかりしていて、ただ単にゲロとウンコにまみれた糞小説では無い。のかもね。

 中でも主人公をジャーナリストにしたのは上手い設定だったなと。この主人公がまた変わっていて、犯罪者紛いのチート的捜査能力を駆使し過去に様々な事件の真相に迫った実績の持ち主でこの話でも遺憾なくその能力を発揮してくれる。おまけに性格は自己評価が高く他人に対してはその逆。これは彼のチートな能力の大半が単純に社会で高評価を得られるものでない事にも起因しているように感じる。その反面でこの主人公は社会が自分に対して行っている能力評価の適切さをよく理解している。相当の強者である。そんな彼が正義の名のもとに、嫉妬心を覆い隠しながら、社会悪をとっちめる姿を見て作中の警察官は彼がジャーナリストだったことで助かったと思ったらしいが、そらそう思うよね。

 一方の悪役の方だが、話が進むにつれて彼らがどうしようもない犯罪のど素人だということがわかってきたり、それと反比例するようにとんでもない事件を起こしていたことが発覚していくので、若干ちぐはぐな感じはしないでもなかった。しかし、親玉の方が保守党の支援者でフィル・コリンズを聞き出した時は流石に笑ったよ。

 

 最後に、そこそこ面白く、読んで後悔とかはしなかったが、やはり翻訳本の哀しさか、日本で普通に生活しているだけでは感覚的にわからない部分もちらほら。それに文句を言うのも違う気がするんだけど、この作品がギャグが主の作品なんでどうしてもね。