詩のようなもの12
●青い夕方●
冷たいカラスがかぁかぁと鳴いている。
空気はそのたびに冷たくなっていった。
空は青白い。
夕方だと言うのに雲のせいで太陽は見えない。
今にも雨が降りそうだった。
青い夕方。
冷たいカラスがかぁかぁと鳴いている。
こんな日は、傘を持たずに散歩したい。
夜明け前の様に静かな街に降りて行って。
夜が来る前に。
雨が降る前に。
貌を変えた街に迷い込むのだ。
カラスたちが空の影の様に黒く黒く飛んでいく。
かぁかぁと鳴くたびに空気が冷えていく。
冷たいカラス。
見慣れたはずの見知らぬ景色。
青い迷路。
住宅街は森。
高層ビルは墓標に見える。
黒と青の迷路街。
カラスたちはそれを俯瞰するだろう。
人間たちの作り上げた、秩序だった混沌の集積を。
それを見てカラスたちは無表情に鳴く。
かぁかぁと鳴いている。
街はそのたびに青く冷たい空気に沈んでいく。
冷たいカラスが鳴いている。
かぁかぁと鳴いている。
夜にカラスが溶けるまで、それは続くだろう。