詩のようなもの9

●夏の足音●

 緑の梢を電車が走り抜けていく。
 窓ガラスには青い空が気持ち良さそうに広がって視界をいっぱいにする。
 夏の足音が聞こえる。
 そうだ。
 これだ。
 僕はこの瞬間を待っている。
 靴を脱いだ裸足が海の冷たさに触れる時を。
 汗ばんだ肌に吹き抜ける風が心地いい。
 太陽の下、どこまでもいけるような気分になる、あの清々しい慢心を。
 夏の予感が。

 駆け抜けていく電車の窓に見える。
 あぁ、今年も夏が始まる。