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詩のようなもの2

■この風を■

 この風を書きたい。
 この風を書きたいのだ。
 冬の切るような冷たい風。
 夜の匂いを運ぶ風。
 ここではないどこかを思い出させる風を書きたい。
 物語はいらない。
 登場人物はいらない。
 ただ風を書きたい。
 それが私の書きたいもののすべてだ。
 その言葉の列を見るたびに風を思い出す。
 そんな文章を書きたい。
 冷たい空気が肺に落ちる。
 その心地よさ。
 心の臓腑を穿つ鋭い風。
 その鮮烈。
 その清冽
 清々しく。
 生きている意味を見出す。
 この風に出会うために生きていたのだ。
 生きていることを強く実感する瞬間。
 それを思い出すいために。
 それを強く思うために。
 私は風を書きたい。
 この風を書きたいのだ。